2012.1.9  UP 1.12
By さわらびY(ゆみ

55 「見沼文化」2012新春感謝祭
「かすかな光へ」上映会 & シンポジウム「弥生時代の「見沼文化」」

 馬場小室山遺跡は、さいたま市域の大きな入り江だった見沼の恵みを受け、先史時代から人の営みが花開いた遺跡。
 その遺跡に学ぶ私たちに「見沼フィールド・ミュージアム構想」という大きな夢を示して下さったのが、「馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム実行委員会」の委員長をお引き受けいただいている教育研究者の大田堯先生です。
 2012年新春、その大田先生の半生記を描く映画「かすかな光へ」鑑賞の会を開くことになりました。
 また、「見沼田んぼ」のルーツ、見沼の弥生時代を土器の特徴から明らかにしていくシンポジウムを開催。
 2012年の年明けとともに、遺跡と地域、いのちとヒトのいとなみを見つめなおし、考古学の新地平を開く試みにチャレンジしました。

2012年1月9日(成人の日) 午前9:50〜12:00 第T部「かすかな光へ」上映会大田尭先生との語らい
 会場は、さいたま市「プラザイースト」。

 映画「かすかな光へ」は、森 康行監督の新作品で、新聞などメディアの評判もよく、期待に胸が高鳴ります。

 寒い朝早くからの会場設営。 →
 はたして、こんな早くからお客様が来られるのか不安でしたが、9:30の開場とともに、続々と入場されてきました。↓

 大田先生の地元さいたま市にお住いの方々だけでなく、インターネットや口コミなどで知ったさまざまな方々のようです。

 大田先生も、お元気にご来場されて・・・
 




  
   9:50 主催者を代表して、鈴木正博さんが開会の辞と上映会の趣旨を述べました。
   10:00 映画「かすかな光へ」を上映。内容は制作元公式HPをご覧ください。⇒ http://kasuka-hikari.com/
   「人は皆、ちがう」、「自ら、かわる」、そして「たがいに、かかわる」ことが、生きものとしての生命の特質と、
    映画「かすかな光へ」はしずかに語り、大田尭の半生記を通じ、未来への希望を私たちに託していると感じました。
   11:30 映画終了後、大田先生が登壇、「映画の大田尭は、森監督の描いた大田尭。私が本物の大田尭です。
    『「教え育てる』」のではなく、一人一人のもつDNAをそっと助け、学習能力を認めてあとは育つのを待つ、
    この映画は『教育映画』ではなく、『反教育映画』。 一老研究者が現実をながめた夢物語なのです。」
   
  
   「森監督がいのちのきずなを描いたこの映画ができた後に、3.11の東日本大震災が起こりました。
    モノとカネが支配するこの地球、何が起きてもおかしくないこの時代です。
    日本がどうなるのではなく、「どうするのか」が、我々に問われています。
    いのちのためのモノとカネに転化することは、並々ならぬことですが、
    その夢という、かすかな光をめぐらせして、身近なところからやっていくこと、
    たとえばサークルや勉強会など、顔の見える人間関係を築くことを、時間をかけて行っていくことかと思います。
    
    人間は、生きものは、過去を持ち、未来を持つすばらしい存在です。
    この映画会を主催してくださった市民フォーラムは、考古学です。
    土を掘って小さなかけらから世界を見て、そして人間の姿を浮かび上がらせようと努力されています。
    過去を見ることによって、かすかな光だが、未来を見ようとしています

    今はまさに、人間とは何か、ということを問うべき時だと思っております。
    遠い遠い過去と、遠い遠い次の世代の間にたつ私たち現在の世代が、人間として何をなすべきかが問われていると思います。」

 
   
  
  会場からは、「札幌でこの映画を見て感動し、先生に会いたくて今日きました」という声も。
   見沼フィールドミュージアムでの大田先生自らの活動を紹介しながら、 「顔の見える人間関係」、
   そして最後に、「その中で変えられていくのは僕自身」とお答えになったのが印象的でした。
   
   12:00 余韻冷めやらぬなか、午前の部終了。 会場で 大田先生と歓談される方も。 
   また多くの方には、最後にカンパにご協力いただきました。

1月9日 午後13:00〜16:40  第U部 シンポジウム 「弥生時代の『見沼文化』」 
  馬場小室山遺跡には縄文時代集落と離れて、弥生時代の住居跡があります。
  そこから出土した土器(壺や甕)には細かく砕かれ細粒となった土器片が「シャモット」として使用されています。
  この特徴に注目し、「見沼焼き」のルーツとして研究を深め、意見交換を行うこととしました。

即席!の案内板です

パネリストは昼休み返上で打ち合わせ
13:00〜趣旨説明 13:10〜基調報告で、シンポジウムはスタート

  

基調報告1 小倉均 氏 (さいたま市教育委員会)
 「見沼周辺の弥生時代の遺跡-発掘調査の状況から-」

基調報告2  宅間清公 氏
 「弥生時代の土器つくりから見た「見沼文化」」


シャモットの特徴をよく表す
馬場小室山遺跡の弥生の壺

詳細な画像は、下記「やちくりけんブログ」の
「☆さいたま市の弥生土器」でご覧ください



馬場北遺跡の台付甕とその破損面

14:15〜パネルディスカッション 「弥生時代の『見沼文化』―弥生時代の「見沼焼き」をご存知ですか?―」
齋藤瑞穂氏(新潟大学)の司会で、始まりました。


  小出輝雄氏・斎藤弘道氏・高花宏行氏から、弥生時代の環濠集落について、また関東各地域の弥生土器の特徴とシャモットなど混入物質に関する情報および縄文土器との比較など報告されました。
 また、縄文土器制作をされておられる井出政男氏(ギャラリー「風画」主宰)から、土器づくりの体験に基づく貴重なお話をいただきました。

 会場からの質問もあり、活発な意見交換のあと、鈴木正博氏が、「今回は土器のシャモットという視点で、ちょうど研究が大きく変わるプロセスを皆さんにお示ししようと試みました。 考古学者が自ら変わっていかないと、一般の方と共通の土俵に立てない。
 大田先生がおっしゃられたように、自ら変わっていく意識改革を市民フォーラムで皆さんと一緒にしていこうというのが本来のテーマです。」と、まとめられました。

 16:40 閉会挨拶を、画家の井山紘文氏が行い、今後の活動として、5月4日(みどりの日)午前10時から12時まで馬場小室山の史跡清掃・観察会のご案内をして、今日一日の「2012『見沼文化』新春感謝祭」を終わりました。