2013.5.9
By さわらびY(ゆみ

59 「見沼文化」2013感謝祭
5/4 めぐりくる春、新緑の馬場小室山遺跡に集う

T 遺跡でのパブリック・アーケオロジー、3年ぶりに復活!

 2005年春から毎年、馬場小室山遺跡のクリーンアップ大作戦と人気の青空考古学教室が行われてきましたが、2011年は東日本大震災のため関係者のみで実施、2012年は午前中の清掃活動は雨天中止で、『南鴻沼遺跡』速報展見学に振り替えましたので、晴天に恵まれた今年は、3年ぶりに馬場小室山に活気が戻ってきました。

 10時に三室中学校に集合、飯塚事務局長が案内して、参加者は馬場小室山遺跡へ。
 この遺跡がさいたま市の史跡に加え、昨年春、第51号土坑出土の土器30点と、小室社のタブノキがさいたま市も文化財となったためでしょうか。遺跡の説明看板も新調され、遺跡の中の植生も整理されて、かつて山のようにあったゴミも格段に少くなってきます。


馬場小室山遺跡に新しく建てられた説明板

 5月4日10時前から、三室中学校に人だかりが・・
地元の小学生と、神奈川県のお友達も参加。

遺跡に到着。いつもの精鋭メンバーに加え、
今回は、インターネットなどで知った初めての方も。


U 「見沼文化」の遺跡を歩く & クリーンアップ大作戦
 
 先史時代の見沼の地形について鈴木正博さんの説明を受けながら、全員で馬場小室山遺跡とその周辺の調査地点を歩き、見沼をのぞんだ縄文むら〜弥生時代後期の馬場北遺跡、そして馬場小室山遺跡の全体構成を確認しました。

弥生時代後期の馬場北遺跡から見る芝川(見沼たんぼ)の眺望は絶景!
馬場小室山遺跡の北側は、見沼に通じるアメーバ―状の深い入り江。 今はその低地に三室中学校があります。
馬場小室山遺跡の特徴は、起伏のある環堤土塚と中央低地。  深い森の中を歩き、足底でその起伏を体感しました。 
人面土器などの縄文晩期の土器30点が埋納されていた51号土坑調査地点に隣接した東側の斜面は、
ショカツソウ(ハナダイコン)の群落。


集めたごみの分別。
以前たくさんあったゴミは、各段に少なくなっていました。

「縄文人のゴミはどうするの?」
「史跡ですから、拾った場所に置いておきましょう。」


U 青空考古学教室 テーマは昔の人の生活-お家と縄文人の塩づくりを考える

 今回の青空考古学教室は、浦和遺跡調査会から参加者にプレゼントされた「浦和の遺跡−写真で見る発掘調査の記録−」を使って、齋藤弘道先生から、先史時代の住居の形についてわかりやすいミニ講演がありました。

 また、八千代市教育委員会の常松さんから、縄文時代の製塩土器について実資料を用いての詳しい説明があり、子どもも、初めて遺跡について学ぶ参加者も、また考古学をお仕事にしている方も、一同に考古学の面白さを共有しました。

 齋藤先生の縄文・弥生時代の住居の移り変わりのお話

常松先生からは、縄文時代の製塩土器について

以前、馬場小室山で私たちが緊急保護した製塩土器

茨城県広畑貝塚の製塩土器
 製塩土器は、厚さ3oぐらいと薄く、全く文様がなく、粗雑な造りをしています。また表面が熱を受けて剥離し、小さな破片が多いのが特徴です。
 霞ヶ浦南岸の広畑貝塚からは、層をなすほど多量に出土しています。
 また海から遠い?さいたま市でも、縄文後晩期の各遺跡からも、数は多くありませんが、必ず見つかっています。
 これらが、海辺のムラからの搬入品なのか、あるいは自分たちでこのような土器を造り、海辺まで行って塩づくりをしていたのか、謎は尽きません。

子どもも身を乗り出して土器に触ってみます

普通の縄文土器とどこが違うか、手で確かめましょう

最後に、参加した子どもたちへ、絵葉書セットのプレゼント

 
 今回は、馬場小室山の森を代々屋敷林として守ってきた武笠家の方も参加し、皆さんに飲み物を提供してくださいました。改めて御礼申し上げます。

V 午後からは三室公民館で

 午後からは、三室公民館での馬場小室山遺跡研究会を開催しました。
 初めての参加の方を含め、多数の方に残っていただき、製塩土器に関する専門的な話を含め、パブリック・アーケオロジーの意味や、昨年夏に開催した「山田湾まるごとスクール」の経過と今後の実践課題について報告がありました。
 
 また午後から、氷川女体神社での磐船祭見学に参加され、見沼の自然と歴史、文化遺産を堪能された方もおられたようです。

詳しい内容は、↓をご覧ください
「馬場小室山遺跡フォーラム」第56回ワークショップのレジュメ

W 「井山紘文 ミクストメディア・水彩展」を鑑賞

 さらに「馬場小室山遺跡フォーラム」第56回ワークショップ活動の一環として、午後4時ごろ、浦和駅近くの柳沢画廊で開かれている「井山紘文 ミクストメディア・水彩展」を鑑賞しにいきました。
 井山氏は、馬場小室山遺跡フォーラムに中核メンバーとして関わり、遺跡の復元想像図やジオラマ制作でその才能を発揮されてきました。
 今回の個展はその本業の作品展。
 その技法のミクストメディア(混合技法)とは、見沼田んぼ周辺から採取した「土」や遺跡の焼土などを、麻布を張り込んだカンバスに接着剤で定着させる技法で、井山氏の作品は「土」のもつ環境変化の風合いと人間味あふれる色合いが魅力です。
 その作品をみんなで堪能してきました。




 恒例の夜の懇親会も盛況で、いいお話も多々ありました。
 印象に残ったのは、浅野さんが「ここに集まってくる人は、それぞれ自分に何かひとつの〈聖域〉を持っていて、それがつらい時にも原動力になっている」とおっしゃられたことです。
 また、パブリック・アーケオロジーとは、既成の概念を学ぶことでも、官製の啓蒙活動ではなく、自立した市民による自主的な活動の実践であることを再認識しました。