2013.11.8up By.ゆみ(Y)

2013.11.4  主催:馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム/NPO野外調査研究所

63  秩父と見沼合同<3・11陸中・山田湾文化復興祈念>シンポジウム

「縄文人は何を考え、どう生きたか? −縄文土器の形と用途−」




 2013年秋、11月4日、「さいたま市民会館うらわ」にて、馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラムNPO野外調査研究所が合同でシンポジウムを企画、開催しました。

 NPO野外調査研究所は、「秩父まるごと博物館」の支援等、秩父の地ベースに活動している市民の研究会で、「馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム」とは、2010年秋に「見沼と秩父の基層文化フォーラム」を共催し、3.11大震災後は「山田湾まるごとスクール」の活動を共にしてきました。

 今回は、3.11東日本大震災の直後からの岩手県山田町での新潟大学の活動を共有化してきた私たちが、山田湾の文化復興を祈念するとともに、自然と共生した1万年の縄文文化と縄文人の知恵に学ぶ機会として、秩父と見沼合同で、シンポジウム「縄文人は何を考え、どう生きたか?−縄文土器の形と用途−」を企画しました。



会場の「さいたま市民会館うらわ」


プロジェクターの準備など会場の設営中です


 縄文土器の資料も並べました

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総合司会は、五十嵐聡江さん




開会の挨拶:吉川國男さん
(NPO野外調査研究所)




 歓迎の挨拶:飯塚邦明さん
(馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム)


       
        基調講演 「縄文土器の形と用途」  齋藤弘道さん

「縄文土器は1万年以上かけて変化するが、煮炊きする土器の形は一貫して深鉢で、口縁は波状を呈します。
 煮炊き以外の用途の土器は、浅鉢や、片口、また土瓶のような注口土器など、さまざまな形が現れます。」


     
   基調報告1 井出政男さん 「土器づくりを粘土から考える!」  右上の土器は井出さんが各地の粘土の配合比をかえて制作したもの。

「埼玉県内の粘土は、県西部と大宮台地では質が異なり、県西部の粘土の方が締まりがよく優れています。
焼きあがった土器は、粘性の良い県西部の粘土の土器の方がキンキンと良い音がし、煮沸を繰り返しても水漏れは少ない。

一方、大宮台地の粘土は締まりがなく劣っていて、音も鈍く、煮沸するとすぐ水漏れしやすい。
どこの粘土でも縄文土器を作れるのではないのです。
県西部の良質な粘土で造った土器と、海の幸に恵まれた大宮台地の海産物。縄文人は補完し合って暮らしたはずです。」


  
    コメント:堀口萬吉さん
  
  地質学の立場から「粘土」とは何?
  鋭いご指摘でした。


           基調報告2 宅間清公さん
「土器づくりの粘土には何を混ぜたのだろうか?」 
早期〜前期の繊維土器、中期の雲母や滑石を混ぜた土器、また民俗事例などを紹介されました

シンポジウム会場





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 基調報告3 鈴木正博さん 「数千年前に海だった見沼低地に出現した謎の縄文土器」 
 「 一万年前の見沼の寿能遺跡では円筒のような条痕文土器。その口縁部は、かすかですが波状に造られていました。
 平底の条痕文という特徴は、大分県の二日市洞穴 第9文化層の土器と共通しており、小さな突起も九州島 の草創期の土器に現れます。
 やがて、口縁部のこの波の形はだんだん大きくなり、突起状になっていきます。
     
基調報告4  田部井功さん 「1,500万年前に海だった秩父盆地の縄文土器」
「秩父の下平遺跡第2号住居跡の一括出土土器34個体を例に、波状の口縁部に文様を施し胴部無文の形が多いこと、
また、変った形をして、胎土も違う搬入土器もあり、当時の他地域との交流を物語っています
。」


  
基調報告5 常松成人さん 「効率のよい塩づくりに考案された土器が見沼にも!」

コメント:鴨志田隼司さん
「茨城県の広畑貝塚、法堂貝塚が製塩土器がたくさん出ますが、
馬場小室山遺跡でも拾い集めた土器から製塩土器が出ました。
いずれも薄手で砲丸型シンプルです。」


「製塩土器の形は、煮沸・製塩の性能重視で、東北松島湾でも関東、西日本でもその形は変わらりません。」

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パネル・ディスカッション「縄文人は何を考え、土器をつくり、使ったのか?」 



パネリスト:齋藤弘道・井出政男・宅間清公・鈴木正博・・田部井功・常松成人さん


司会:五十嵐聡江・井山紘文さん


質問に答えて 田部井功さん


閉会の辞  松浦茂樹さん


熱気が感じられる会場


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 今回のシンポジウムは、変化する縄文土器の一万年の流れの中で、深鉢の口縁を波状に飾るという大きな共通した特徴と、その派生するプロセス、また「おもてなし」のこころや自然の神への...祈りが反映して、深鉢以外のさまざまな器形が生み出されていくこと、一方機能性のみ重視した製塩土器の発生など、縄文土器を形と用途について、理解と知識を深めることができました。
 特に、秩父と見沼の二つの地域からの発表から、同じ埼玉県でも、地理的環境の違いとそのことによる縄文文化への反映、また共通する要素など、二次元的な視野で把握できたことは大きな成果でした。