2014.11.5up By.ゆみ(Y)

2014.11.3  主催:馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム/NPO野外調査研究所

70  <3・11陸中・山田湾文化復興祈念>秩父と見沼合同シンポジウム

「縄文人は何を考え、どう生きたか? <第2回> −土偶、その表現と祈り―」


 今年も、「馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム」と、「NPO野外調査研究所」と合同で、「秩父と見沼合同シンポジウム」を開催しました。

 この二つのグループは、3・11後、大震災の復興最中にある岩手県山田町を訪ね、鯨と海の科学館や遺跡の探訪、山田史談会と交流など、共に学ぶ機会を持ち、昨秋は「縄文人は何を考え、どう生きたか?−縄文土器の形と用途」のシンポジウムを共催しました。
 今秋は、その二回目、テーマは「−土偶、その表現と祈り―」です。

 会場は、プラザイースト。幸い、さいたま市は秋らしい好天に恵まれ、遠近からスタッフと、10時開演を待つ聴講の参加者が集まってきました。

会場のプラザイーストのロビー。朝日がまぶしい

受付の準備。今回の資料集も中身が濃いです。


「さいたま朝日」10/25号見開きで、今回のフォーラムと馬場小室山遺跡を紹介。
さっそくポスターと一緒に、会場入口に掲示しました。
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10:00開始、司会は、斎藤弘道さん

鈴木正博さんから資料集の確認と、質問用紙・アンケートの説明。
    
 開会の挨拶は、飯塚邦明さん。 「馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラム」の実行委員長大田尭先生をご著書と共にスライドで紹介、
 また、馬場小室山遺跡をあつかった三室中学校の英語部制作の映像作品「Banba Omuroyama Ruin at Saitama」を紹介、その一部が上映されました。
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 午前の講演《表現の視点「土偶とは何か?」》の最初は、小野美代子さんの「考古学と土偶」 

 小野さんは、土偶がこれまでの研究で語られてきたか、研究史を丁寧に追い、今後の課題を明らかにされました。
 土偶は「女性を模った像」で、その用途は多様。初期の小型は多産と繁栄、縄文社会での集団の「祈り」を表彰するもの。欧州旧石器後期のVenus像との関連から、周囲地域の影響を否定できない、とのこと。  なお、故意破損説は出土事例から全面否定されました。


    
 
 続いて、宅間清公さんの「風俗と土偶」と、井出政男さんの「美術と土偶」の講演。

 宅間さんは、坪井小五郎の土偶研究に触れ、1895年の『コロボックル風俗考』の挿絵に描かれた身体装飾や衣服を紹介。 現在の土偶研究と方向性は違うが、当時の研究では、最先端をいったもので、遺物の観察所見は現在の研究に通じる部分があるとのことでした。

 井出さんは、美術の視点で土偶を論評し、造形とは感情に訴えるものであり、また土偶の多様な表現は、目には見えなくても生と死の間に存在する精霊の具体的な表象であると、述べられました。

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 午後は、浅野光彦さん制作の映像作品「見沼をのぞんだ縄文むら-馬場小室山遺跡に学ぶ-」上映。

 続いて 《地域の視点:「土偶から地域を探る!」》の講演。 
 田部井 功さんから「秩父の土偶」、鈴木正博さんから「馬場小室山と見沼の土偶」について語っていただきました。
     
 田部井さんは、皆野町の小林據英・茂の父子で蒐集した農山村民具や考古資料「小林コレクション」に触れ、土偶信仰に通じる叉木の道祖神民具などの事例を紹介されました。

 また、皆野町駒形遺跡の完形土偶の出土状況を示し、乳幼児を埋葬したらしい小さな土坑内に首から下の部分が、少し離れたところから頭部だけ検出された状況から、副葬の際、頭部を別にしたことの考察を試みられました。
      
 鈴木正博さんは、馬場小室山遺跡から出土した、大きな頭を突起で装飾した突起土偶「オムちゃん」と、山形土偶の祖形「ヤマばっぱ」を紹介。 見沼周辺の土偶との比較でその系譜を明らかにされました。
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 最後に、松浦茂樹さん・齋藤弘道さんの司会で、本日の5人の講師によるパネルディスカッション「縄文人は土偶に何を表現し、どのような祈りをこめたのか?」。 
 会場からの質問に答えながら、土偶の本質に迫る討論がありました。
    
 司会は、松浦茂樹さんと・齋藤弘道さん。
 土偶は決して壊されるためのものではないという説と一部を別に埋納してある事例をめぐり、また持ってのは集団か家族か個人かなどをめぐって、会場からのコメントや活発な意見の応酬もあり、充実したディスカッションでした。

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 議論が伯仲する中、午後4時半を過ぎて、吉川國男さんの閉会の挨拶と、「秩父と見沼合同シンポジウム【第2部】」のご案内がありました。
 
 次回第2部は、11月24日(祝)、またここプラザイーストで、シンポジウム「ようこそ「山田湾まるごとスクール」へ」が開催されます。

 その日、再びお会いすることを楽しみに、16:45散会しました。